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吉田 健太*; 外山 健*; 井上 耕治*; 永井 康介*; 下平 昌樹
まてりあ, 62(3), p.154 - 158, 2023/03
原子炉圧力容器(RPV)の中性子照射脆化因子の一つである直径3nm程度の微細な転位ループを高精度に分析するために開発したウィークビーム走査透過型電子顕微鏡(WB-STEM)に関する解説を行うとともに、当該手法と3次元アトムプローブ法(APT)及び陽電子消滅法(PAS)を組み合わせた最先端の照射脆化研究について紹介する。WB-STEMは材料内部に存在する特定の格子欠陥に対して最適な電子線の収束角及び検出角を設定することによって、従来透過型電子顕微鏡での観察が困難であった微細な転位ループの定量評価を可能にする手法である。この手法を用いて10n/m程度の低照射量から10n/mを上回る高照射量まで複数照射量条件で照射された欧州加圧水型軽水炉の監視試験片中の転位ループを分析し、APTやPASで分析した溶質原子クラスターとの比較を行った。その結果、8.210n/mから1.210n/mの高照射量領域において転位ループの数密度が顕著に増加することを明らかにした。また、測定された転位ループ及び溶質原子クラスターの数密度や寸法からモデル式に基づいて、これら微細組織の脆化への寄与を評価し、高照射量領域において転位ループが脆化に大きく寄与する可能性を示した。
高見澤 悠; 端 邦樹; 西山 裕孝; 外山 健*; 永井 康介*
Journal of Nuclear Materials, 556, p.153203_1 - 153203_10, 2021/12
被引用回数:3 パーセンタイル:31.78(Materials Science, Multidisciplinary)原子炉圧力容器鋼における中性子照射脆化に及ぼすシリコンの影響を明らかにするため、三次元アトムプローブにより、高照射量領域まで中性子照射された監視試験片中の溶質原子クラスタを分析した。高Cu含有材では、Ni, Mn, Siがクラスタ中心のCu原子を囲むように凝集し、コアシェル構造を形成するのに対して、低Cu含有材ではNi, Mn, Siがクラスタ中を均一に分布していた。クラスタ内のCu原子の数はCu含有量の減少と共に減少したが、それを補うようにSi原子数が増加した。材料中の公称のSi含有量の増加とともに、クラスタのギニエ半径は減少し、数密度が増加した。結果として、クラスタの体積率は一定であった。延性脆性遷移温度移行量とクラスタの体積率とギニエ半径の積の平方根が良い相関関係を示すことから、脆化の主要因は、溶質原子クラスタを転位が切断するメカニズムによる硬化であることが示された。また、Si含有量の増加により、クラスタの体積率は一定のままギニエ半径が減少することで脆化の程度を減少させることが示された。
高見澤 悠; 西山 裕孝
Journal of Pressure Vessel Technology, 143(5), p.051502_1 - 051502_8, 2021/10
被引用回数:3 パーセンタイル:30.36(Engineering, Mechanical)本研究では、照射脆化予測に取込むべき化学成分を特定し、原子炉圧力容器鋼の照射脆化予測の不確実性を評価した。日本の加圧水型原子炉の監視試験データに対してノンパラメトリックベイズ(BNP)法を用いた統計分析を行った。BNP法は入力データの複雑さと不確かさを考慮可能な機械学習手法である。脆化への影響が大きい入力変数の組合せを評価可能な統計的指標を導入し、中性子照射量, Cu, Ni, Si含有量の4つの変数の組合せが脆化予測に最も効果的であることを明らかにした。また、化学成分では脆化量に対してCu含有量の影響が最も大きく、Ni, Siの順番で影響が大きいことを示した。関連温度移行量(RT)をBNP法を用いて算出した結果、計算値と実測値の残差の標準偏差は8.4Cであり、現行の国内脆化予測法(JEAC4201-2007(2013年追補))と同等かそれ以上の予測性有していることを確認した。BNP法によって計算されたRTの事後分布の95%確信区間(入力データの不確実性を考慮した場合にデータが存在し得る範囲)は国内脆化予測法のマージンと同等かそれよりも小さく、JEAC4201-2007(2013年追補)において、適切なマージンが設定されていることを定量的に示した。
高見澤 悠; 西山 裕孝; 平野 隆*
Proceedings of ASME 2020 Pressure Vessels and Piping Conference (PVP 2020) (Internet), 7 Pages, 2020/08
原子炉圧力容器(RPV)は中性子照射前後のシャルピー衝撃試験で得られる延性脆性遷移温度(DBTT)に基づき中性子照射による材料劣化を予測した上で構造健全性評価が行われている。シャルピー衝撃試験で得られるDBTTには試験に依存した様々な不確かさが含まれる。本研究では、原子力機構がこれまでに取得したRPV鋼の未照射材・中性子照射材データを用いて、ベイズ統計に基づく解析モデルを構築し、試験片の採取位置のばらつき、試験片の数、試験温度を考慮した上でDBTTの不確かさを評価可能な手法を整備した。上記の手法を用いて国内RPV鋼に対する評価を行い、試験数や試験温度がDBTTの不確かさに及ぼす影響を定量的に明らかにした。
高見澤 悠; 勝山 仁哉; 河 侑成; 飛田 徹; 西山 裕孝; 鬼沢 邦雄
Proceedings of 2019 ASME Pressure Vessels and Piping Conference (PVP 2019) (Internet), 8 Pages, 2019/07
原子炉圧力容器鋼の溶接熱影響部(HAZ)について、実際の原子炉圧力容器を模擬した継手溶接材(継手HAZ)及びHAZの代表的な組織を再現した熱処理材を作製し、JRR-3を用いた中性子照射試験及び照射後試験を実施し、照射前後の微細組織変化及び機械的特性変化を調べた。未照射材において、継手HAZ及び細粒HAZの破壊靭性が母材よりも低く、その要因が島状マルテンサイトやフェライト相の存在に因ることを明らかにした。また、粗粒HAZの中性子照射脆化感受性は母材よりも小さい値を示し、継手HAZ及び細粒HAZは母材と同等であることを明らかにした。
高見澤 悠; 伊藤 裕人; 西山 裕孝
Journal of Nuclear Materials, 479, p.533 - 541, 2016/10
被引用回数:6 パーセンタイル:49.29(Materials Science, Multidisciplinary)高中性子照射量領域における照射脆化に関して、ノンパラメトリックベイズ法を用いて日本国内の監視試験データや試験炉照射データに対して統計解析を実施した。ノンパラメトリックベイズ法は実測データを正規分布の和で表す解析手法であり、正規分布の数と平均値や分散は実測データの複雑さに応じて決定される。本研究では、照射脆化の主因として考えられている溶質原子クラスタを構成する元素(Cu, Ni, Mn, Si, P)や照射条件を入力パラメータとして、照射脆化との関係を評価した。解析の結果、中性子照射量が異なるデータであっても同じ材料のデータは同じ正規分布に分類されており、中性子照射量に依存した脆化メカニズムが顕在化していないことが示唆された。
鈴木 雅秀; 西山 裕孝
金属, 71(8), p.42 - 45, 2001/08
Cu含有量が少ない原子炉圧力容器鋼材(以後、低銅圧力容器鋼材と呼ぶ)の照射特性について、実験的に検討した結果を紹介し、脆化にかかわる課題について解説した。照射データは全てJMTRを用いて取得したものである。全般的な照射特性としては、シャルピー衝撃特性の変化量(T41J)は小さく、良好な性質を有することがわかるが、鋼材間のばらつきが大きく、鋼材によっては、21019 n/cm (E1MeV)の照射でT41Jが60を超える。高純度の低銅鋼材に対しては、脆化予測式から判断すればもっと脆化の低減が期待されてもよいものである。低銅鋼材における照射特性の相違、ばらつきは鋼材組織の何を反映しているのかについて、未照射材を用いた検討を行った。この結果、中性子による変化の少ない低銅鋼材ほど微細で高密度の炭化物を有する組織となっていることがわかった。この他、化学成分として窒素の効果等について言及した。
石井 敏満; 大岡 紀一; 新見 素二; 小林 英男*
金属, 71(8), p.20 - 24, 2001/08
JMTRホットラボにおいて、原子炉圧力容器鋼など構造材料について超音波を応用した非破壊的照射脆化診断技術の開発を進めている。これまでに、原子炉圧力容器用A533B cl.1鋼材,不純物Pの含有量を低く調整したA533B cl.1鋼材及びサブマージアーク溶接材の3種類の材質の衝撃試験片をJMTRにおいて523K又は563Kで中性子照射を実施した。これらの試験片について遠隔操作による超音速測定を行い、試験片中を伝わる超音波の音速及び減衰率を求めた。その結果、未照射材に比べて照射材では、横波及び縦波の音速が低下するとともに、縦波の減衰率が上昇することがわかった。また、音速の低下は、中性子照射による鋼材の剛性率及びヤング率の低下に起因することが予測される。更に、シャルピー吸収エネルギーの41Jレベル遷移温度のシフト量が増加するのに伴い横波の音速が低下し、縦波の減衰率が上昇する特性データを得た。
石井 敏満; 大岡 紀一; 加藤 佳明; 齋藤 順市; 星屋 泰二; 芝田 三郎*; 小林 英男*
JAERI-Conf 99-009, p.163 - 172, 1999/09
原子力プラントの寿命延伸に伴う監視試験片数量の減少により、圧力容器鋼などの中性子照射脆化量を合理的に評価する新手法の確立が必要となる。本研究では、超音波を利用した非破壊試験手法を構造材料の照射脆化量の評価に適用するため、中性子照射したA533B1鋼や溶接金属に入射した超音波の音速及び減衰率の評価を行い、これらの超音波伝播特性と41Jシャルピー遷移温度の移行量との関係を明らかにした。その結果、遷移温度の移行量が増大すると超音波の音速が減少し、一方、減衰率が増加する傾向が認められた。特に、超音波横波音速の変化と遷移温度の移行量との間には良い相関があることがわかり、照射脆化量を非破壊的に評価する手法としての超音波法の有効性を明らかにした。
石井 敏満; 大岡 紀一; 小林 英男*
Proc. of 2nd Japan-US Symp. on Advances in NDT, p.151 - 156, 1999/00
原子炉圧力容器鋼の経年的な中性子照射脆化量を評価するために炉内に装荷した監視試験片数量の減少が懸念され、監視試験を補う合理的な非破壊試験手法の確立が急務となっている。本報告では、A533B1鋼等の炉内構造材料の照射及び未照射試料に入射した超音波の伝播時間や底面エコー高さを測定した結果をもとにその音速及び減衰率の変化を評価した。照射脆化した材料では、超音波の音速が減少し、一方、減衰率が増加する傾向が認められた。さらに、超音波の横波音速変化と41Jシャルピー遷移温度の移行量との間に良い相関が認められたことから、超音波法が照射脆化量を非破壊的に評価する手法として有効であることを明らかにした。このほか、超音波の伝播時間やエコー高さなどの特性値をホットセル内で、容易かつ高精度に測定するために開発した遠隔操作用の超音波探触子固定治具の概要について紹介した。
辻 宏和; 横山 憲夫*; 塚田 隆; 中島 甫
JAERI-M 93-204, 24 Pages, 1993/10
原子力施設用材料の特性データを効率的に利用することを目的として開発・整備を進めてきた原子力材料総合データベース(JMPD)の概要及びその利用例を紹介する。JMPDは、大型計算機のリレーショナルデータベースであるPLANNERを用いて、データの入力と管理を行い、これを中核として、検索支援システムの充実が図られている。必要なデータを容易に検索できるように、利用者がデータ構造やデータ内容に精通していなくても、メニュー選択方式で目的とする検索が可能なシステムを新たに作成した。JMPDの利用例に関しては、以下の3種類について述べる。(1)試験研究炉用Al合金の設計降伏点及び設計引張強さの検討,(2)原子炉圧力容器鋼の疲労き裂成長速度のばらつきとK制御モードの差との関係に関する統計解析,(3)クリープ曲線データから最小クリープ速度及び3次クリープ開始点を客観的に決める方法の提案。
中島 甫; 横山 憲夫; 庄司 哲雄*
1989年情報学シンポジウム論文集, p.17 - 26, 1989/01
原子炉圧力容器鋼の高温水中での変動応力によるき裂成長加速現象が見出され、この現象を設計コードに適切に反映させるため、試験法の確立、その加速機構の解明及びデータベースの構築を進めた。ここでは、データベースの概要、疲労き裂成長挙動に及ぼす鋼中の硫黄量の影響ならびに時間基準のき裂成長速度による評価に関するデータベースの試用例及び将来の展望について記述した。
古平 恒夫; 松本 正勝; 中島 伸也
鉄と鋼, 68(8), p.1040 - 1045, 1982/00
単一試験片で、材料の破壊抵抗曲線(J-Rカーブ)を得る手法の確立を目的として、4種類の原子炉圧力容器用銅材を供試し、-60Cから100Cの間の数温度において直流電位差法を適用して3点曲げによる破壊勒性試験を行った結果、以下の結論が得られた。1)き裂長さと電位差変化との関係は、(a+?a)/aと(V+?V)/Vで整理すると、試験片の平面寸法を相似に保てば、試験片サイズ、鋼種、試験温度にかかわりなく、バラツキの少ない一定の傾向が認められる(マスターカーブ)。ここで、aは初期き裂長さ、?aはき裂進展量、Vは初期電位差そして?Vはき裂進展に伴う電位差の増分である。2)上記のマスターカーブを荷重-変位曲線から、単一試験片でJ-Rカーブを求めることが可能である。
古平 恒夫; 中島 伸也; 松本 正勝; 深谷 清
鉄と鋼, 61(8), p.1032 - 1039, 1982/00
板厚250mmのA533Bcl1鋼及び鋼材に熱処理を施して低靭性化を図った鋼材(中性子照射脆化挙動を模擬)を供試して遷移領域から上部棚域にわたって破壊開始時のJ値の試験片サイズ及び温度依存性、シャルピ衝撃性質との相関を調べた結果、以下の結論が得られた。1)へき開破壊域においては、J値に試験片サイズ依存性が認められるが、遷移温度の上昇を100MPa√mのレベルで比較すると、移行量は試験片サイズにかかわりなくほぼ同一で、なおかつ、41Jで評価したシャルピ衝撃試験における遷移温度の上昇と良好な一致を示す。2)上部棚域においては、J破壊靭性の低下率はシャルピ上部棚エネルギのそれより大きい。3)以上の知見より、中性子照射脆化に対する破壊力学的サーベイランス試験方法として、遷移領域ではシャルピ主体上部棚域ではJ破壊靭性により評価することを提案する。
古平 恒夫; 中島 伸也; 松本 正勝
鉄と鋼, 64(7), p.877 - 890, 1978/07
小型試験片によりJ破壊靱性を求めるため、A533Bcl.1鋼について4種類の測定法を比較検討した。3点曲げ試験は-65°~70Cの間の数温度で実施し、き裂発生点の検出はスメックゲージ法を用いた。さらに、A553Bcl.1鋼およびA542cl.1鋼を用いRカーブ法によりblunting line,J値とCODとの関係などを明らかにするため実験を行った。得られた結果を要約すると以下のとおりである。(1)Riceらによる方法が4種の測定法の中では、手法の容易さ、所要試験片数量、精度などの点でもっとも有効である。(2)Valid Jに関する試験片サイズの条件式は、B25(J-y)と表される。(3)J値から予測したK値は、大型試験片によるK値と良好な一致を示した。(4)Rカーブ法におけるblunting lineを表す式は、J=3.7yaで表される。(5)J値、CODおよび横収縮量LCの間には、つぎの関係式が成り立つ。J-y=2.6(COD),J-y=2.0(LC),COD=0.77(LC)
藤村 理人; 中崎 長三郎; 生田目 宏
溶接学会誌, 38(6), p.608 - 614, 1969/00
原子炉圧力容器の設計条件および使用条件を検討するとき,中性子照射による鋼材の劣化をじゅう分考慮に入れなければならないことは,他の工業分野における圧力容器の設計条件と全く異なった新しい問題点である。このため,速中性子による圧力容器材料の照射損傷については,基礎研究および確性試験が海外およびわが国において精力的に進展している。
川崎 正之; 佐藤 千之助*
原子力工業, 14(9), p.9 - 30, 1968/00
原子炉の圧力容器の性能は、炉の寿命に関するだけに慎重な検討が必要とされる。最近、とくに照射脆化の問題の解明がクローズアップされてきているが、本号では、海外の研究開発状況を中心に、問題点を探ってみた。
大津 拓与; 飛田 徹; 富施 正治; 八巻 賢一; 寺門 宙; 西山 裕孝
no journal, ,
原子炉圧力容器の照射脆化評価手法の高度化として、破断後の監視試験片から微小試験片(0.16インチ厚CT試験片)を採取し、マスターカーブ法と呼ばれる手法により破壊靭性を評価する手法が検討されている。国内では未照射材を用いたラウンドロビン試験が進められており、微小試験片により大型試験片と同等の破壊靭性を評価可能であることが確認されている。国内規格への反映のためには、照射材にも同様の手法が適用可能か確認する必要がある。そのため、遠隔操作による微小試験片を用いた破壊靭性試験を行うための試験技術を開発する必要がある。マニピュレータによる遠隔操作においては、10mm角未満である微小試験片の取り扱いには困難が伴う。すなわち、試験片のハンドリングの難しさに加え、ホットセル内でのガラス越しの作業においては、視野に制限があり、奥行き方向の感覚が掴みづらい等のことから精密作業は困難となる。本報では、遠隔操作による試験作業の容易化を目的とした、試験治具の開発、開口変位計の改良等の試験技術開発について報告する。
飛田 徹; 大津 拓与; 西山 裕孝
no journal, ,
4mm厚のミニチュアC(T)試験片を用いて、最大110n/cmまでの中性子照射を受けた原子炉圧力容器鋼の破壊靭性値を評価した。破壊靭性値のばらつきやシャルピー遷移温度との相関について報告する。
飛田 徹; 大津 拓与*; 高見澤 悠; 西山 裕孝
no journal, ,
加圧熱衝撃事象において、原子炉圧力容器の内面に想定した欠陥から非延性き裂が発生しても、き裂が容器の板厚を貫通するまでに停止する可能性がある。本報告では、機械的特性の異なる3種の原子炉圧力容器鋼を用いたき裂伝播停止破壊靭性(K)試験を行い、Kの温度依存性が静的破壊靭性と同様にマスターカーブに従うことを確認した。さらに、き裂伝播停止破壊靭性と計装シャルピー試験におけるき裂進展停止時衝撃力との相関について検討を行った。